子育てにおいては子供を一人の人間として尊重して、親からの一方的な叱りや怒るという行為だけではなく、ほめて伸ばすことが大事だと35ラボでも今まで記事にしてきました。
一方で、わがまま放題で親が叱らないケースがあることもまた事実。今回は子供に対して親が叱ることの意味を考えてもらう機会になれればと思い特集してみたいと思います。
この記事は「麻衣子の日々」というブログを運営されている麻衣子さんのコメントから作成しております。叱らない子育ては大事だけれど、公共の場などでわがままし放題の子供を放置している親もいること、そこから叱るということをしっかりと見つめなおし、参考書類や専門家の声も交え、今回記事化させていただきました。
「怒らない子育て」が理想だと分かっていても、子どもが何度言っても同じ間違いを繰り返したり、お友達に乱暴なことをしたりしたとき、「本当にこのままでいいの?」と迷いや葛藤を抱えていませんか?特にSNSや育児本で「怒らない育児=正解」という風潮が広がる中で、感情的になる自分を責めてしまうママも多いでしょう。その責任感と、理想と現実のギャップに悩む気持ち、痛いほどよく分かります。
しかし、子どもの健やかな成長にとって本当に必要なのは、「怒らないこと」ではなく、「感情的な怒り」と「適切な叱り」を使い分けることです。このページでは、「叱る」ことが子どもに社会で生きていくための**「心の境界線」**を教える、愛情深いコミュニケーションであることを解説します。あなたの不安を解消し、自信を持って子どもと向き合えるための具体的な方法をお伝えします。

1. 「怒る」と「叱る」の決定的な違い
あなたの子供へのしつけは怒っています?叱っています?
まず、私たちが日常的に使う「怒る」と、子どもの成長に必要な「叱る」の違いを明確に理解することが、冷静な子育ての第一歩です。
感情の爆発「怒る」のデメリット
「怒る」とは、親自身の感情(イライラ、疲労、不安など)を解消するために、大声や強い口調で子どもにぶつける行為です。この行為は、子どもにとって以下のデメリットしかありません。
- 萎縮と自己肯定感の低下:「ママを怒らせた自分はダメな子だ」と感じ、行動が委縮し、自尊心が低下します。
- 問題の先送り:怒られたことへの恐怖が先行し、なぜ叱られたのか(問題の行動)を考える余裕がなくなります。
- 怒りの連鎖:親の感情的な怒り方を模倣し、将来、友達やパートナーに対して同じように感情を爆発させる傾向が高まります。
子供のころに親に怒られないように気を付けた経験のある方はきっと多いことでしょう。思い出してみてください、その当時親からかけられた言葉は怒りではなかったですか?
行動を正す「叱る」の必要性
一方、「叱る」とは、子どもの行動が「なぜ、いけないことなのか」を伝え、次にどうすべきかを教える教育的な行為です。叱る目的は、親の感情解消ではなく、子どもの成長と安全にあります。
- ルール学習:社会や家庭のルール、他者との関わり方を具体的な行動を通じて学習できます。
- 安全確保:命に関わる危険な行動(飛び出し、火遊びなど)を認識し、回避する能力を身につけます。
- 安心感の獲得:「ここまでが許容範囲」という境界線を知ることで、子どもはかえって安心感を得られます。
| 怒る(NG) | 叱る(OK) | |
|---|---|---|
| 主語 | 親(私の気持ち):「もうやめてよ!ママがイライラするでしょ!」 | 子どもと状況:「人のものを勝手に取るのは、どうしていけないことかな?」 |
| 目的 | 親の感情の解消 | 子どもの行動の修正 |
| 伝わるメッセージ | 「あなたはダメな子だ」 | 「あなたのその行動は間違っている」 |
| 結果 | 親子関係の信頼喪失 | 社会性の習得と成長 |
もちろん急にそんな言葉でないよとか、感情が先に出てしまうという声が上がると思うのですが、この表を理解しているのと理解していないのでは大きく異なります。
怒る前に一呼吸おいて、自分のしつけは怒りなのか叱りなのかを自身に問いかけ、そのうえでどんな言葉がいいのかを考えると子供も理解できる成長につながっていきます。
2. なぜ「叱らない」だけでは子どもは伸び悩むのか?

「怒らない子育て」の究極の形は、子どもに一切の注意をせず、全てを自由にさせることです。しかし、これでは社会で生きるために最も重要な「境界線」を学ぶ機会を失ってしまいます。
社会にでてその境界線を知っていないと困るのは子供自身です。それを回避するためにも親がしっかりとしつけを行うことが重要になるのです。
社会性の土台となる「境界線」の学習
私たちは社会生活において、常に「していいこと」と「してはいけないこと」の境界線の中で生きています。この境界線(ルール)は、他者との協調や安全を保つためのものです。親が「叱る」ことを放棄すると、子どもは次の重要な境界線を見失います。
- 「自分の権利」と「他者の権利」の境界線:他人の物を奪う、お友達を叩くといった行動を叱られないと、自分の欲望が最優先され、社会で孤立しやすくなります。
- 「安全」と「危険」の境界線:命に関わる危険を親が真剣な態度で示さないと、子どもは遊びと危険の区別がつかなくなり、事故に遭うリスクが高まります。
- 「許容」と「拒絶」の境界線:親が全てを許してしまうと、子どもは社会に出たときに初めて「拒絶」を経験し、強いストレスや自己否定に陥りやすくなります。
過度な自尊心と「打たれ弱さ」のリスク
叱られないで育った子どもは、一見、自己肯定感が高いように見えますが、それは「常に自分が正しい」という過度な自尊心につながる場合があります。その結果、学校や集団生活の中で、先生や友達から注意を受けた際、「自分の存在全体を否定された」と感じてしまい、「打たれ弱さ」や、怒りを爆発させるなどの強い反発を示すリスクが高まります。
適切な「叱り」は、子どもに「失敗しても大丈夫、ただし行動は直そう」というしなやかな強さを教える機会となるのです。
3. 感情的にならないための「叱り方」実践テクニック
でもなかなかどんな言葉をかけたらいいのかわからなくなることもあります。
頭では「叱る」が必要だと分かっていても、感情が爆発しそうになるのは自然なことです。ここでは、感情的になることを避け、教育的な「叱り」に変換するための具体的なテクニックを紹介します。
「あなた」ではなく「行動」を指摘する(Iメッセージを活用)
子どもの人格全体を否定するのではなく、「今、やった行動」に焦点を当てて伝えましょう。
- NGな「Youメッセージ」:「あなたはなんて乱暴なの!」「あなたはいつもだらしない!」
- OKな「Iメッセージ」:「ブロックを投げたとき、ママは怪我をするんじゃないかと心配したよ。お友達の顔に当たったらどうなるかな?」
Iメッセージを使うことで、親の感情を伝えつつ、問題の行動とその影響を子ども自身に考えさせることができます。
補足 IメッセージとYOUメッセージの説明
ここで使う「Iメッセージ」「YOUメッセージ」とは臨床心理士のトーマス・ゴードンが提唱したもので、Iメッセージとは「私」を主語にして主張する方法、一方でYOUメッセージは「あなたは」を主語にして主張する方法です。
例 Iメッセージ
(私は)そんな行動をとったから悲しい
(私は)そんな言葉使いをして心配だ など
例 YOUメッセージ
(あなたは)ちゃんと考えなさい
(あなたは)なぜそんなことしたの? など
例を見比べてみるとわかるように、Iメッセージは子供に感情を伝えやすく、理解しやすいやわらかい表現になり、YOUメッセージは角が立ちやすい、強い感情表現になりやすい傾向にあります。
叱った後の「サンドイッチ・フォロー」
叱りっぱなしで終わると、子どもは不安や後悔だけが残ります。叱った後こそ、愛情で包み込む「サンドイッチ方式」でフォローしましょう。
- (パン)承認と愛情の確認:「ママは〇〇(子どもの名前)のことは大好きだよ。それは変わらないよ。」
- (具材)問題行動の再確認と代替案の提示:「ただ、お友達を叩いた行動は間違っていたね。悲しい気持ちを伝えるときは、言葉で『いやだ』と伝えようね。」
- (パン)期待と信頼で締めくくる:「次はきっとできるよ。ママは〇〇(子どもの名前)を信じているよ。」
これにより、子どもは「叱られたけれど、ママは自分の全てを否定したわけではない」と感じ、自己肯定感を保ちながら改善に向かうことができます。
「親が冷静になれない」時のための「タイムアウト」
感情のピークは通常6秒で過ぎ去ると言われています。カッとなりそうになったら、以下のルーティンを実行しましょう。
- 物理的距離を取る:「ママは今、少し頭を冷やすね。5分後に戻ってくるから、それまで座って待っていてね。」と伝えて、別室に移動します。
- クールダウン行動:深呼吸を3回する、冷たい水で手を洗う、など、親自身が決めたクールダウン行動を実践します。
推奨される学術的根拠(研究に基づく):
心理学では、親の感情的な怒り(Youメッセージ)が子どもの攻撃性や不安を高める一方、親の感情を適切に伝えるIメッセージが子どもの共感力や問題解決能力を育むことが示されています。
4. ママの心の余裕を生む予防策チェックリスト
ママが感情的に「怒る」のは、体と心の余裕が限界に達しているサインです。日頃から心のセーフティネットを張るためのチェックリストです。
- 自身の体調管理:睡眠不足や空腹は怒りの引き金です。子どもの夜泣きなどで睡眠が足りないと感じたら、昼寝をしたり、夕食前に軽い栄養補給(プロテインバーなど)をしたりする工夫をしていますか?
- 「やらないこと」リスト:家事や育児で完璧を目指していませんか?「床掃除は週に1回でいい」「夕食は週に2回はレトルトでもOK」など、手抜きを許可する「やらないこと」リストを作成していますか?
- パパとの連携:怒りのピーク時に「今、交代して!」とSOSを出せるルールをパパと共有していますか?
- 事前準備の徹底:子どもが触ってはいけないもの(リモコン、貴重品など)は、子どもの手の届かない場所に完全に隔離し、「叱る必要」を減らす工夫をしていますか?
5. ママの疑問を解消!「叱る」子育てQ&A
- Q1: 公共の場で騒いだ場合、その場ですぐに叱るべきですか?
- A1: はい、公共の場では「その場ですぐに、短く」叱ることが原則です。長々と説明すると周囲の注目が集まり、子どもも親も追い詰められます。「だめ!静かに!」と短く、真剣な表情で伝え、すぐにその場から離れて、落ち着いた場所で改めて説明しましょう。大切なのは、「いけないことである」というメッセージを即座に伝えることです。
- Q2: 叱った後、子どもが泣き止みません。どう対応すべきですか?
- A2: 叱られた後に泣くのは、子どもが**「ママの真剣な気持ちを受け止めた」**証拠でもあります。無理に泣き止ませようとせず、まずは「泣いてもいいよ。悲しかったね」と気持ちを受け止め、抱きしめてあげましょう。泣き止んでから、改めて「なぜいけなかったのか」を優しく説明し、和解することで、子どもは安心感を得て、反省の念を深めます。
- Q3: 何度叱っても、同じことを繰り返します。叱り方が悪いのでしょうか?
- A3: 叱り方だけでなく、子どもの発達段階と叱る頻度を見直しましょう。特に3歳以下の子どもは、何度言っても理解できません。この時期は「叱る」よりも「環境整備」(できないようにする)と「行動の先取り」(手本を示す)を重視します。また、叱りすぎると効果が薄れるため、本当に命や他者に危険があるときだけ叱るという優先順位をつけましょう。
- Q4: パパと叱る基準が違います。子どもが混乱しませんか?
- A4: 夫婦で基準が違うと、子どもは「ママに怒られたらパパに逃げればいい」と学習し、混乱します。完璧に一致させる必要はありませんが、「命に関わること」「他者を傷つけること」の2点については、必ず夫婦間で叱る基準と態度を統一しましょう。日頃からコミュニケーションをとり、互いの意見を尊重し合うことが大切です。
- Q5: 叱る前に「深呼吸」をしても、間に合わず感情が爆発してしまいます。
- A5: 深呼吸が間に合わないのは、すでに怒りの閾値が下がっているサインです。叱る直前だけでなく、日頃から意識的に深呼吸やリラックスする時間を作り、心のコップを空にしておきましょう。また、反射的に怒鳴ってしまったら、後から「さっきはママも感情的になってごめんなさい」と素直に謝罪することも、親の正直な姿を見せる良い教育になります。
6. まとめ:愛情を「ルール」に変えて未来を照らす
「怒らない子育て」という理想を追い求めながら、感情を抑えきれずに自己嫌悪に陥ってしまうママ。その理想を追いかける努力こそ、あなたがどれだけ真剣に子どもに向き合っているかの証です。今回の特集で自分の感情と向き合い、子育ての叱るという行為を理解することもできたはず。
子供は叱ってもいいんです。その叱りが子供の成長となり、社会に出たときに大きな財産となるはずです。
子供のための子育てにおいて感情的な「怒り」ではなく、教育的な「叱り」が、子どもに社会で必要な心の境界線を教えるための愛情深いコミュニケーションであることを知りました。この知識は、きっと「自信を持ってルールを教えられる、芯のあるママ」という希望へと導きます。あなたの愛情を、あいまいな期待ではなく、明確な「ルール」という形に変えて子どもに伝えることで、子どもは安心感を土台に大きく羽ばたけるのです。
そして、次に叱るときは、深呼吸の後に「〇〇のことが心配だから、この行動は直そうね」と、「Iメッセージ」で伝えてみてください。あなたのその明確な一歩が、子どもの未来に安心という名の光を灯し、親子関係をさらに強固なものにするのですから。
今回の特集で、実はまだ語りつくせないこともわかりました。35ラボではこの記事の続きをあと2回にわたってお届けします。明日以降もお付き合いいただけるとありがたいです。
また、今回の特集のきっかけとなった麻衣子さん、ありがとうございます♪
また、今回特集して思ったのが、読者の方の何気ない気づきというのはとても大事だなと。記事にしてほしい内容があればぜひみなさまコメントください。
相互リンクで記事を書いてほしいなども受け付けます。
調べて自分たちの言葉でブログは紡いでいるので多少お時間はいただきますが、私たちにも学びになります。よろしくお願いします。